「当神社のあじさいについて」




当神社のあじさいの花が咲き揃ってくる時期は、6月中旬以降(第3週目頃:6月20日前後)

となります。(咲き始めるのは6月初旬~中旬頃ですが、数は少ないです)




天気(降雨・気温)の状況に左右されることもあり、正確に申し上げることはできないのですが、

他の地域のあじさいの開花時期よりも全体的に2、3週間遅くなっています。




ただ、あじさいの種類や場所によっては、一部、早い時期(5月下旬や6月初旬頃)から

既に満開のものや、3、4割くらい小さな花(花芽)を付けているものもあります。

そいうった状況を知った上で、“そこに趣がある”、と神社に参拝され、

写真撮影したり、静かなひとときを過ごされる方も多くいらっしゃいます。



         




私たちは、実際に目に見えるものに対してだけ一喜一憂してそれを判断しようとしますが、
見えるものの背後に存在する大切なものを見ることができる人は、本当の意味で(心が)
豊かに生きることができると思います。


あじさいの数が多いか少ないか、綺麗か綺麗でないか、という目だけであじさいの花を見る
のではなく、あじさいの花を見ることを通して、大切なことを感じてください。


この自然の中で生かされている自分、こうやって元気であじさい神社に参拝できている
ことへの「感謝」の気持ちを、自分の心の中に見つけてください。


それを見つけることができれば、その見方に気付くことができれば、それこそが、
心の魔を祓う魔除け参りとなります。


あじさい神社の紫陽花をそのように見ていただければ、大変嬉しく思います。









               <あじさいの実情>



実は、当神社のあじさいの花は咲く時期が遅いということだけでなく、

現在、あじさいの木(あじさいの株)自体が激減してしまっているという問題があります。


当初は、山一面に数千のあじさいが咲き誇っていました。

しかし、徐々に枯れ始め、20年ほど前には、ほぼ全滅に近い状態になってしまいました。

その後、いろんな対策を講じ(氏子・崇敬者の皆さんの力も借りながら)、あじさいが枯れる

のを防ぎ、あじさいを増やそうと努力してきました。

解決に向けて少しづつ善処していると思っていますが、あじさいの咲き誇るあじさい神社

には、まだまだ遠く及んでいないのが現状です。




あじさいが激減した原因は、主に以下の4つの理由によると思われます。


●「コウモリガの幼虫」に、あじさいの木の幹や枝(中心の道管部分)を喰われてしまい、
中にストロー状に穴が開いて、水を吸い上げる力がなくなってしまって枯れる。


●気候が変わり、雨が降らず、強い「日照り」の日が続くようになった。
(梅雨の時期であるのに雨が降らなくなった。また、夕立も発生しなくなった。)


●雑草、特に「根笹」の繁殖によって、あじさいの根が負けてしまい、養分や水分を
取られてしまう。


●あじさいの花が咲く前に、「鹿」に花芽(新芽)を食べられてしまい、花が咲かない。






                <問題の詳細>



◆コウモリガの幼虫は、大量に発生してあじさいを喰い枯らしました。
このコウモリガの幼虫を駆除するべく、様々な害虫駆除剤(化学薬品以外にも、木酢液や
灰など、効果があると言われるものいろいろ)を試しましたが、効果はありませんでした。
(駆除剤を散布しても、幼虫に効き目がある前に、雨が降って流れてしまうことも・・・)

もちろん、あじさいの木の数が多く、幼虫を1匹1匹捕まえるなんてこともできません。
できることは、枯れたあじさいの木の枝を、1つ1つ切り出して燃やし、生き残っているあじさい
の枝に幼虫が移るのを防ぐことだけでした。

その大量のコウモリガの幼虫は、神社の山の桧(ひのき)林における、枯れた桧から移って
くることが分かりました。すなわち、この枯れた桧の中に幼虫として潜み、やがて成虫
(コウモリガ)となり、時期がくると飛んできて、あじさいの木に大量の卵を産み付けるのです。
ですので、この枯れた桧を伐採して燃やしてしまう必要があります。

ようやく数年前、林業者(山師)によって、大々的に桧林の手入れ(枯れ桧の伐採)をして
もらうことができましたが、桧は無数にあり(しかも1本1本が高さ20m以上もあり大きく重い)、
まだ多くの枯れ桧が残っています。

神社の管理者として、私たち神職の家族で、少しずつではありますが、枯れ桧を伐採したり
枯れ枝を集めて燃やしたりと、できることをやっていますが、山は広く、木も大きく、なかなか
思うように進みません。家族でできなければ、もっと山師に頼めばよいのではないか、
と思われるでしょうが、予算の関係上、それもできません。



◆あじさいは、日陰で、適度な日の光が当たり、そして水気が多い場所を好みます。

近年は、日本全体の気候が大きく変わり、温暖湿潤気候から熱帯気候のようになって
しまいました。梅雨でも雨が降らず、夏も猛暑(酷暑)で毎日強い日差しが続きます。

雨が降らなくなり、日照りが続くようになってしまった気候の変化については、私たちは
どうすることもできません。
それでも昔は、日中は雨が降らなくとも、夕方になると夕立(雷)が起こり、一時的でも
雨が降りましたが、最近では、気候の変化もさることながら、人為的にも、送電線の鉄塔
に雷が落ちないよう雷雲を発生させない避雷針が設置されるなど、夕立でさえも起こらなく
なってしまいました。



◆根笹については、繁殖力がとても強く、根が地面の中を網目のように広がっていきます。
一方、あじさいの根は根笹の根よりも細くて弱く、根笹は、あじさいの木の根元の隙間を
下から突き破って、細い笹竹を何本も生やして上に伸ばしてきます。
その結果、あじさいは、やがて根笹(笹竹)に取り囲まれ取り込まれ、水も栄養も奪われて
しまい、花芽もつかず、やがては枯れてしまいます。

根笹は、その根(根ぶち)が節のある細い竹のようになっており1本1本が強く、耕して取り
除くにも大変な労力が必要であり、数も無尽蔵にあるので、実質は不可能です。

根笹に対する除草剤はありますし、効き目はあるのですが、如何せん、山(面積)は広く、
除草剤の費用も高額になってきます。なにより、枯らしても枯らしても次から次へと広がり、
その繁殖力には勝てません。



◆鹿については、当初は、山の環境が変わって山の中に食べ物が少なくなり、(恐る恐る)
人里に下りてきたのかもしれません。
しかし今では、人も恐れず、人の生活圏で我が物顔に闊歩し、なんでも食い荒らすように
なってしまいました。植物の新芽はもちろんのこと、植物の葉や茎、柔らかければ木の皮
(紅葉や桜の木の皮)だって食べます。

あじさいは、ただでさえ数が少ない上に、あじさいが育ってきて花芽が付き、まさに花が咲こう
とするその直前に花芽を食べられてしまうので、そのあじさいは葉だけになり、その年には
もう花は咲きません。最近では、花芽だけでなく、若葉も食べられてしまいます。
更に悪いことに、鹿の唾液には植物を枯らす細菌がいるのか、鹿が食べたあじさいの箇所
は、その周囲まで、葉や茎が枯れてきてしまいます。

鹿は、昼間は山中に隠れていますが、夜中に現れて(鹿は夜行性)あじさいを食べます。
私たちは、それを四六時中監視することはできません。

鹿の被害は、当神社に限ったことではありません(日本の山里全体の問題)。
村の畑の作物を食い荒らしたりするため、20年程前から、地域として協力し合い、県や市
から予算補助をしていただき、山裾全体を鉄のフェンスで可能な限り囲いました。 しかし、
暫くは効果があったのですが、徐々に囲いが綻んできた隙間や元々フェンスで囲えていない
箇所から侵入してくるようになりました。(人間を怖がらなくなったことも拍車をかけ、今では
堂々と正面から侵入してくるようになりました)

昔は、犬を飼っている家も多かったですが、今では少なく、鹿が怖がる生き物(天敵)も
いなくなってしまいました。

兵庫県も予算を組んで害獣駆除をしてくれていますが、駆除する個体数よりも、増える
鹿の数の方がはるかに多く(鹿の繁殖力は強い)、実質的な効果が得られていません。

・・・ほんとに、日本中、多くの人が鹿の被害に苦しんでいます。






枯れた桧によるコウモリガの問題もそうですが、鹿の問題も、そもそも私たち人間が、
山林の手入れを、長い間放置してきたことにあります。

(日本古来の木造家屋も建てなくなり、木の需要も激減し(輸入木材が増え)、薪を
拾って火を焚くようなこともなくなり、山に人が入って手入れすることもなくなりました。)

雨が降らない気候に変わってしまった(雨が降る時はゲリラ豪雨のようになってしまう)
という問題も、人為的影響による地球環境・気候の変化(温暖化?)によるものかも
しれません。


そういった意味で、あじさいの問題も、ひいては自分たちの責任、人災だと思います。




だからといって、そのままでは何も変わりません。

事実は事実として受け入れ、1つ1つ、できることをしていかなければと思っています。







※近況報告


◆コウモリガについては、自分たちが一気に食い荒らしたので、食べるあじさい自体が少なくなり、
結果的に、被害が目立たなくなってきました。



◆根笹への対策としては、大きな鉢を地面に埋めて、その鉢の中にあじさいを植えると、その鉢
が障壁となり、鉢の外からの根笹の侵入を防ぐことができました。

ただ、鉢の外の地面からは水が入って来ないため、鉢の中は土が乾燥しやすく、雨が降らない
日が数日続いただけで、すぐにあじさいに元気がなくなり、枯れ始めてしまうのです。
(乾燥していると、あじさいの葉自体が日焼けし、葉の周囲から茶色くなってきて枯れてしまう)

→これらのことから、
お宮の坂(正面参道)の西側の山の斜面と、根笹が多くある神社西側の境内の地面に、複数個
の大きな鉢を埋めて、その鉢の中にあじさいを植えました。

そして、雨が降らず日照りが続くようなときには、水道水を使って(水道代がかかっても)、
水やりをするようにしました。

ただ、山は広く、水やりするといっても、(当初はバケツに水を汲んで手で運んでいたものの、)
山中に水道配管を張り巡らせることは予算的にも困難なので、遠くではあるけれど現在ある
1箇所の水道栓から100mほど散水ホースを延ばして設置し、ホースでの水やりができるよう
にしました。(自動散水設備等があればと思うが、高額な設備費用や更なる水道代が・・)

なお、周囲に木などなく、あじさいに強い直射日光が当たるような場所には、適度な日陰(木陰)
ができるように植樹を進めている。(既に、枝垂れ紅葉や花水木の木を何本か植えました)



◆鹿があじさいの花芽(葉)を食べることへの対策としては、網の柵を作り、あじさいが植えてある
周囲を囲ってしまえば、鹿の侵入を防げることが分かりました。(鹿は、網が絡み付くことが嫌らしく、
また、網の柵の高さを2mくらいの高さにしておけば、それを飛び越えることができない)
(地面に網を敷いておくと、足に網が絡むのも嫌みたいで、そこも鹿は歩かないみたいだった。)

ただ、人目につきにくく鹿が身を隠しやすいような場所では、柵の網を食いちぎって網に穴を
開けられてしまうことがあった。

→これらのことから、
神社西側の境内と、お宮の坂(正面参道)の西側の山の斜面の周囲を、高さ2mの網で囲んだ。
(等間隔に数百本の鉄筋を打ち込み、そこに網を掛け渡していくことで網の柵を作って囲んだ)
さらに、囲った網の柵の山側には、全面に鉄フェンス(鉄のメッシュ)も取り付けた。
また、使わなくなった古い網を、網の柵に沿って地面に敷いておいた。


・・・ ご参拝される皆様に、少しでも綺麗な紫陽花を鑑賞していただけるよう、
智恵と工夫で、できることを1つ1つやっていこうと思います。









自然界はつながっています。


なので、都合良く一方だけを排除しようとしても、真の解決には至らないんでしょうね。



20年以上に亘ってこの問題と取り組んできましたが、結局のところ、

「その土地土地の環境に合わせて、互いに共存するしかない」

ということなのでしょう。



でも、一体どうすれば、お互いにバランスのとれた、棲み分けができるのか、

共存共栄が実現できるのか、


答えはまだ見つかっていません。




鹿除けの網柵



     



            



鹿除けの網柵とあじさい鉢植え



      鹿除けの網柵とあじさい鉢植え



         鹿除けの網柵(山側の鉄フェンス)